スクリーンリーダーNVDAの開発とコミュニティ活動

Takuya Nishimoto

対象レベル:
初級
カテゴリ:
Community

説明

PyCon JP 2012併催イベントで紹介したNVDAは、Pythonで実装されたWindows用スクリーンリーダーで、アクセシビリティの検証ツールでもあります。NVDAの開発の現状、そしてNVDA日本語チームや海外コミュニティの状況を報告します。

概要

NVDA (NonVisual Desktop Access) は無料・オープンソースのスクリーンリーダー(視覚障害者がコンピューターを音声や点字ディスプレイで利用するためのツール)です。実装の大部分に Python が使われているのが特徴です。 PyCon JP 2012 の併催イベントとして NVDA 日本語チームは NVDA Workshop in Japan を開催し、オーストラリア在住の NVDA 開発者を招きました。 NVDA 日本語チームは NVDA の日本語翻訳と、日本語対応を強化した派生バージョンのリリースをしています。2012年の時点では実用的とは言えない品質だったNVDA日本語版は、リリースごとに改良を重ね、現在では日本の視覚障害者に広く利用されるようになりました。 また国際的な NVDA ユーザーのコミュニティの活動も活発になり、オンラインカンファレンスとしての NVDACon の開催、GitHub を通じたグローバルな貢献、Python で実装可能な拡張モジュール(アドオン)の情報交換などが進んでいます。 NVDA は最新のアクセシビリティ標準への準拠を推進しており、ブラウザベースでリッチなUIを提供する Web アプリケーションの操作に対応します。また、そのような Web アプリケーションの開発者が無料で入手できる検証ツールとしても広く知られるようになりました。 最近の統計では NVDA 日本語版のユーザーの約4割が Windows 10 を使用しており、このことからも Windows やアプリケーションの最新バージョンに迅速に追従できるスクリーンリーダーであると言えます。 NVDA日本語チームは2013年から2015年まで3年間、独自イベントを主催し、主にユーザーを対象にNVDAの情報を発信してきました。一方で、日本語版を独自に開発するだけではなく、可能な限り本家版の開発に直接コミットしていくことも目指してきました。 2016年は私たちの出発点である PyCon JP にもどって、NVDA の開発や日本語化に使われている Python 関連技術の紹介、NVDA でアクセシビリティの検証がどのように可能なのか、そして NVDA コミュニティに Python 技術者がどのように貢献できるかをお知らせしたいと思います。
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